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東京都建築審査会の記録
住宅金融普及協会の弁明(2)
弁明書(2)の内容から明らかになった事実
確認審査機関が以下に度々弁明するように、事業主が説明会を通じて住民に提示した図面と建築確認申請のために出した図面がその安全対策等について大きく食い違うということです。例えば、説明会では駐車場と説明した低層棟側の車寄せ区画が建築確認申請では避難経路になっていたりです。このように、見せる相手によって図面がいろいろ違う事業主は説明会で度々「信頼してください」と言っていますが、残念ながらとても信頼できるようなことはしておられないでしょう。
@反論書の1の「(1) 建築基準法第77条の20第五号の基準不適合」について
審査請求人らは、処分庁に本件建築物の工事施工者である大成建設の元社員である理事がいることにより、建築基準法(以下「法」という)第77条の20第五号の基準に疑義がある旨の主張している。
しかしながら、同規定は、機関の役職員の構成に関する基準を定めるもので、この基準への適合性については、機関の役員に変更が生じた都度、監督主務省に対し報告を行うことにより、確認を受けているところである。したがって、審査請求人らの法第77条の20第五号の基準不適合との主張は当たらない。
A反論書の1の「(2)建築基準法第22条及び63条違反」について
審査請求人らは、乙第1号証で、「・・・植物等の性質により、防火上支障が生じることも考えられるので、飛び火防止や耐火性能等を損なわないような配慮を行うことが望まれる。」とされていることについて、本件建築物の屋上緑化に疑義がある旨の主張をしている。
しかしながら、平成22年3月17日付け弁明書(以下「弁明書(1) 」という)の2(2)で述べたとおり、屋上緑化における植物や土等については、建築物の一部として扱わないのであるから、「・・・配慮を行うことが望ましい」とされるにとどまっており、本来の法適合性確認の審査の対象外である。
B反論書の1の「(3)建築基準法第29条違反」について
地階における住戸の居室の技術的基準は、審査請求人らが主張する建築基準法施行令(以下「令」という)第22条の2第一号のロとハの規定の両方を満足しなければならないわけではなく、同号のイからハまでのいずれかに該当することとされている。
本件建築物の地階住戸の居室については、令第22条の2第一号ロにより、各住戸において必要とされる機械換気設備が設置されており、基準に適合しているものである。
C反論書の1の「(4)建築基準法第34条違反」について
審査請求人らは、本件計画において、盛土による地盤面のかさ上げの有無を指摘している。
本件計画の地盤面について、切土、盛土の状況は、乙第7号証の配置図に示すとおり、「高層棟」部分の建築物が周囲の地面と接する位置となる計画地盤には、南側「設備棟」付近に一部盛土部分があるものの、北側の道路境界線沿いの大部分は切土である。また、「高層棟」で31mを超える部分がある領域I及び領域Eの範囲で、地盤面算定の際の「建築物が周囲の地面と接する位置JIこは盛土部分はなく、審査請求人らが主張するような地盤面のかさ上げの操作はない。
したがって、弁明書(1)の2の(4)で述べたとおり、「高層棟」部分は、非常用の昇降機の設置を要しない建築物に該当するので、審査請求人らの主張は当たらない。
D反論書の1の「(5)建築基準法第48条違反」について
弁明書(1)の2の(5)で述べたとおり、審査請求人らの法第48条違反との主張は当たらない。
E反論書の1の「(6)建築基準法第55条の適用に関する疑義と同法第86条違反」について
弁明書(1)の2の(6)で、述べたとおりで、ある。
F反論書の1の「(7)建築基準法第91条違反」について
弁明書(1)の2の(7)で述べたとおり、審査請求人らの法第91条違反との主張は当たらない。
G反論書の1の「(8)建築基準法施行令第126条の6違反」について
審査請求人らは、施行令第126条の6の規定に関し、本件計画に疑義がある旨繰り返し主張している。
しかしながら、旧建設省住宅局建築指導課長の通達(1971年:40年前と今とでは社会の状況が違う!)は、審査請求人らが主張するような単なる一個人の見解ではなく、建築基準関係規定の法適合性を判断する際の技術的助言として、広く運用されているものである。(日本建築行政会議編集の「建築物の防火避難規定の解説2005Jにも収録されている。)また、本通達は、記の各号のーのいずれかによれば、施行令第126条の6のただし書き第二号に該当するものとして取り扱うこととする旨を規定しており、本件建築物においては、各住戸に進入可能なバルコニーが設けられており、何ら違法性はなく、審査請求人らの主張は当たらない。
なお、本件建築物の場合、「高層棟」及び「低層棟」の道路に面する外壁画には、両棟とも住戸に進入可能なバルコニーが計画されており、火災時の救助活動や消火活動について、実質的にも支障がないものと考えられる。
H反論書の1の「(9)東京都建築安全条例第11条違反」について
上記Cにおいて述べたとおり、本件計画には審査請求人らが主張するような盛土による地盤面のかさ上げはなく、地盤面の設定は適切なものであり、都条例第11条違反には当たらない。
I反論書の1の「(10)東京都建築安全条例第19条違反」について
審査請求人らは、平成21年3月31日の説明会に用いられた図面に基づき、本件建築物「低層棟」の車寄せ西側付近の避難経路部分に駐車スペースがあり、避難経路が確保されていない旨の主張をしているが、当該図面は建築確認申請図書ではない。弁明書(1)と併せて提出した低層棟1階平面図において、その部分は駐車スペースではなく、通路となっており、避難経路は適切に確保されている。したがって、審査請求人らの主張は当たらない。
J反論書の1の「(11)東京都高齢者、身体障害者等が利用しやすい建築物の整備に関する条例第11条違反」について
審査請求人らは、東京都高齢者、障害者等が利用しやすい建築物の整備に関する条例第11条について、疑義がある旨主張しているが、本件建築物は、共同住宅の特定経路における出入口、廊下、エレベータ一等の整備の基準に適合している。したがって審査請求人らの主張は当たらない。
K反論書の1の「(12)容積率についての疑義」について
審査請求人らは、本件建築物の地階の容積率緩和部分について、面積算定図の標記が記号での表記となっており疑義が解消されない旨主張している。
しかしながら、記号等の表記であっても、設備棟B1階面積算定図及び設備棟B1階平面図を見比べれば、容積率の緩和を行っている部分は判別できるようになっている。また、審査請求人らは、「高層棟」B1階南側のバルコニーをはさんだ突出部についても、面積算定についての疑義がある旨を主張している。しかしながら、B1階の当該部分は、下階82階住戸の居室の吹き抜け部分で、面積の算入はされておらず、B1階平面図と面積算定図は整合している。なお、建築確認申請図書ではないため、処分庁が関知するところでない。
したがって、審査請求人らの容積率制限に疑義があるとの主張は当たらない。
L反論書の1の「(13)天空率、道路斜線制限、北側斜線制限についての疑義」について
審査請求人らは、天空率の算定等高さの制限についての疑義を主張しているが、次に述べるとおり、いずれの制限も適切に算定されており、その主張は当たらない。
- 天空率の算定について
法第56条第1項第二号の隣地との関係についての建築物の各部分の高さの制限(いわゆる隣地斜線制限)については計画地の断面図「A-A断面図」にその記載があり、「高層棟」の一部で斜線制限を超えている高さ部分が存在している。(算定部分省略:確認審査機関による図面非公開要求のため)法第56条第7項の規定による特例(いわゆる天空率の算定)を適用しているが断面図で隣地斜線制限を超えている部分で、申請に係る建築物の天空率と申請に係る建築物と同一の敷地内の同一の地盤面において隣地高さ制限に適合するものとして想定する建築物(以下「隣地高さ制限適合建築物」という。)の天空率の差について見ると、「高層棟Jの東側隣地境界線の算定位置のうち、その差が最も近い箇所では約1.5%であり、西側隣地境界線の算定位置のうち、その差が最も近い箇所では約0.5%となっており、いずれも申請に係る建築物の天空率が隣地高さ制限適合建築物の天空率を上回っており、違法性はない。なお、審査請求人らは日影図に関し、本件建築物に天空率を採用した場合とそうでない場合の差異を明示することを主張しているが、そのような図書は建築確認審査の対象ではなく、処分庁において関知するところではない。 - 道路斜線制限、北側斜線制限について
法第56条第1項第一号の前面道路との関係についての建築物の各部分の高さの制限(いわゆる道路斜線制限)及び法第58条の高度地区における北側斜線の制限については、既に提出している配置図の表に記載されているとおり、適切に行われている。