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東京都建築審査会の記録
住宅金融普及協会の弁明(1)
@弁明の趣旨
本件審査請求を棄却する との裁決を求める。
A却下を求める理由
(1) 建築基準法第18条の2違反について
審査請求人らは、処分庁が、「組織として住宅建設事業者よりのスタンスをもつこと、及び非常勤理事であるE.B.氏は本件建築物の工事施工者である大成建設の元社員である」ことから、公正な判断に疑義がある旨の主張している。
しかしながら、処分庁は、建築基準法(以下「法」という。)法第77条の20に規定されているとおり、役員、職員の構成が、確認検査の業務の公正な実施に支障を及ぼすおそれがないものであるとして、確認検査機関の指定を受けている。確認検査を実施するに当たり、法適合性について、公正かつ的確な審査を行っており、審査請求人らの主張は失当である。
(2) 建築基準法第22条及び63条違反について
審査請求人らは、本件建築物の屋上に緑化がなされていることから、法第22条及び第63条の規定に違反している旨の主張をしている。
しかしながら、本件建築物の屋根の構造は鉄筋コンクリート造の耐火構造で「防火地域文は準防火地域内の建築物の屋根の構造方法を定める件」(平成12年5月25日建設省告示第1365号)に適合しているため、市街地における通常の火災による火の粉により、防火上有害な発炎をする、文は屋内に達する防火上有害な溶融、き裂その他の損傷が生じるものではない。
一方、屋上緑化における植物や土等については、建築物の一部として扱わないこととされている。(日本建築行政会議編集「建築物の防火避難規定の解説2005(第6版)」)
したがって、本件建築物の屋根の構造は、法第63条の規定に適合しており、審査請求人らの主張は当たらない。また、法第22条は、防火地域及び準防火地域以外の区域に指定される区域であり、本件敷地は防火地域、準防火地域に該当しているため、関係がない。申請人らは低層棟の火災時における避難経路について、実質的に機能しない旨の主張をしているが、機械式駐車場は密閉式の消火設備が設置されているうえ、低層棟の階段からエントランスホールを経て道路への避難も可能なため、避難上支障はない。
(3) 建築基準法第29条違反について
審査請求人らは、本件建築物の地階住戸について、建築物における衛生的環境の確保に関する法律に配慮しなければならない旨の主張をしている。
しかしながら、本件建築物の地階住戸の居室については、法第29条に定める衛生上必要な技術的基準への適合性を確認し、建築確認処分を行っているものである。
また、建築確認処分を行うに際して審査の対象となる「建築基準関係規定」は、建築基準法第6条第1項に、「この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地、構造文は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるのをいう。」と定義されている。
すなわち、指定確認検査機関である処分庁の審査範囲は、申請建築物に関する敷地、構造、設備等に関する建築基準関係規定に限られることとなる。
審査請求人らが主張の根拠としている「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」は、処分庁である指定確認検査機関が審査する建築基準関係規定ではない。
(4) 建築基準法第34条違反について
審査請求人らは、本件建築物の「高層棟」部分のエレベーターに非常用のものがないため、法第34条に違反しており、地域全体の安全保障を脅かす建築物である旨の主張をしている。
非常用昇降機の設置を要するか否かを判断する際の建築物の高さを算定する際の地盤面は、建築基準法施行令(以下「施行令」という。)第2条第2項によることとなり、地盤面からの建築物の高さが31mを超えない場合や建築物が施行令第129条の13の2の規定に該当する場合は、非常用昇降機の設置は要さない。
本件建築物の「高層棟」部分は、建築物が周囲の地面と接する位置に高低差があるため、施行令第2条第2項による地盤面は、領域1-領域Vの5つの部分に生じることとなる。これらの地盤面と「高層棟」高さの関係は、領域mから領域Vの地盤面からは、高さ31mを超える部分はなく、領域I及び領域Eの地盤面からは、高さ31mを超えている部分はパラペットで、あり、屋内的用途に供していないので、施行令第129条の13の2の規定に該当する。
以上のとおり、「高層棟」部分は、非常用の昇降機の設置を要しない建築物に該当するので、審査請求人らの主張には当たらない。
(5) 建築基準法第48条違反について
審査請求人らは、本件建築物の駐車施設の面積が用途地域の制限を超えている旨主張をしている。
本件建築物は、法第86条第1項に基づく認定(以下「一団地認定」という。)を取得し、2つの敷地(「区域T」及び「区域U」)が一団地を形成しているが、本件建築計画における自動車車庫の床面積の用途地域の制限は、法第48条が一団地認定の「特例対象規定」(法第86条第1項)ではないため、「区域T」の敷地における用途地域の制限によることとなる。「区域T」の用途地域は、敷地の過半が属する第二種住居地域の制限が適用される。
また、第二種住居地域内に建築することができる附属自動車車庫は、施行令第130条の8の規定によれば、同一敷地内にある建築物(自動車車庫の用途に供する部分を除く。)の延べ床面積の合計を超えないものとされている。
したがって、本件建築物の「区域T」の建築物の延べ面積は、12965.09平方メートルで、このうち自動車車庫の用途に供する部分の面積は1823.49平方メートルとなっており、附属自動車車庫が同一敷地内の建築物(自動車車庫の用途に供する部分を除く。)の面積を超えないことは明らかであり、施行令130条の8の規定に適合している。
(6) 建築基準法第91条違反について
審査請求人らは、本件処分の敷地の過半が第一種低層住居専用地域に属することから、建築物の高さ制限及び容積率に関し、法第91条違反である旨主張している。
しかしながら、同規定では、「第52条、第53条、第54条から第56条の2まで、第57条の2、第57条の3、第67条の2第1項及び第2項並びに別表第3の規定を除く。」とされており、法第55条の第一種低層住居専用地域内における建築物の高さの限度に関する規定は、当該地域内に存する建築物の部分についてのみ適用される。
また、法第52条の容積率の制限は、一団地認定の特例対象規定であるため、「T区域」及び「U区域」をーの敷地とみなし、敷地内にある用途地域ごとの建築物の容積率の法定限度(法第52条第1項及び第2項)にその敷地の用途地域内にある各部分の面積の敷地面積に対する割合を乗じて得たものの合計以下(いわゆる加重平均)とされている。
以上のことから、審査請求人らの主張は当たらない。
(7) 建築基準法施行令第126条の6違反について
審査請求人らは、本件建築物には消防隊が進入でき、行き来できる通路等が設置されていない旨の主張をし、施行令第126条の6の規定に違反しているとしている。
しかしながら、施行令第126条の6には、ただし書きにより非常用進入口の設置に代わる緩和規定があり、さらに同条ただし書き第二号については、「共同住宅における建築基準法施行令第126条の6の解釈について」(昭和46年12月3日付け住建発第85号)により、共同住宅における非常用進入口の代替措置が定められている。
本件建築物においては、各住戸に進入可能なバルコニーが設けられており、上記要件に適合しており、審査請求人らの主張は当たらない。
(8) 東京都建築安全条例第11条違反について
審査請求人らは、本件建築物の「高層棟」に設置されている直通階段について、「ブロックごとに一つだけ設置され、・・・構造的に違反している」と主張している。
しかしながら、東京都建築安全条例(以下「都条例」という。)第11条は、建築物の高さが31mを超える部分を共同住宅の用途に供する場合の規定である。本件建築物の「高層棟」は、既に述べたとおり、地盤面からの高さ31mを超える部分がパラペットで、あり、都条例第11条第1項に定められている第9条第二号の共同住宅の用途に供する部分はないため、本規定の適用はない。したがって、審査請求人らの主張は当たらない。
(9) 東京都建築安全条例第11条違反について
審査請求人らは、本件建築物の大部分の居室において、都条例第19条の窓先空地が設置されておらず、避難通路もない旨の主張をしている。
しかしながら、本件建築物のうち、高層棟xx-yyの住戸、低層棟xx-yyの住戸及び低層棟xx-yy間の住戸については、都条例第19条第1項ニ号イの「道路に直接面する窓」を有する居室があり、その他の各住戸については、同号口の「幅員4m以上の窓先空地に直接面する窓Jを有する居室があるため、審査請求人らの主張は当たらない。
また、同条第2項に規定する窓先空地からの幅員2m以上の避難経路も適切に計画されており審査請求人らの主張は当たらない。
(10) 東京都建築安全条例第28条違反について
審査請求人らは、本件建築物の自動車車庫からの出入口が、入口と出口が壁面で区切られている構造であるため、都条例第28条第2項の規定に違反している旨の主張をしている。
しかしながら、同規定は、機械式駐車施設の乗降口における待機場所の確保に関する規定であり、駐車施設出入口前面に、奥行き及び幅員がそれぞれ6.0m以上の空地またはこれに代わる車路の確保を要求しているものである。
本件計画では、駐車施設前面に奥行き6.1m及び幅員6.0m以上の空地(車路)が確保されており、都条例の規定に適合している。
(11) 東京都福祉のまちづくり条例施行規則第5条違反について
審査請求人らが主張している「東京都福祉のまちづくり条例」は、処分庁である指定確認検査機関が審査する建築基準関係規定ではない。
(12) 容積率についての疑義について
本件建築物の容積率の算定は適切に行われており、審査請求人らの容積率に疑義があるとの主張は当たらない。なお、地階の容積率の緩和部分は、「設備棟」の地下1階に計画されている共同住宅の用途に供する受水槽等の機械室部分であり、算定は適切に行われている。
(13) 資料提出の要請について
審査請求人らが審査請求の理由で主張する点に関する資料は、行政不服審査法第33条第1項に基づき提出する。なお、確認申請図書である当該資料は、本来公開されることを前提としていないこと、所有者のプライバシー侵害がなされる恐れがあること、設計者の著作権・その他の権利が侵害される恐れがあること等から、その取り扱いについては、特段の配慮をお願いする。