事件の概要
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東京都建築審査会の記録
東京都の弁明(1)
@弁明の趣旨
法55条認定処分及び法86条認定処分にかかる本件審査請求を棄却する との裁決を求める。
A却下を求める理由
法55条認定処分及び法86条認定処分について、請求人らが処分のあったことを知った日は平成21年4月8日であり、行政不服審査法第14条1項の審査請求期間を徒過しているため。
B法55条認定(高さ制限緩和)の理由
法55条は第一種低層住居専用地域または第二種低層住居専用地域内における建築物の高さについて、10m又は12mのうち都市計画で定められた限度と制限しており、本計画建築物の敷地は都市計画で10mに指定されている。
同法第55条第2項では建築物の高さの限度が10mと定められた第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域内において、空地を有し、かつ、一定規模以上の敷地面積である建築物であって、特定行政庁が低層住宅に係る良好な住居の環境を害するおそれがないと認めるものの限度は12mとするとされているところである。
東京都においては「第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域内における建築物の高さの緩和認定基準Jを定め、その適切な運用に努めており、本計画建築物は、同条および認定基準に適合している。
請求人らは法第56条第7項の規定を受けた隣地高さ制限と法第55条第2項の認定処分との関連を主張しているが、法第55条は第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域内における建築物の絶対高さ制限についての規定であり、隣地高さ制限とは何ら関係はない。
また、周辺地域で緩和が認められた前例がない旨を主張しているが、法第55条は第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域内で、空地および敷地の規模要件を定めており、該当する敷地において適用できるとしている。
よって、請求人らの主張は根拠がない。
C法86条認定(一団地認定)の理由
建築基準法は、一の敷地に対して一の建築物が原則であり、二以上の建築物に用途上不可分の関係がある場合に限って、これらを一の敷地にあるものとみなすこととしている。
しかしながら、大きな計画地に用途上不可分といえない建築物を一体的に計画するような場合において、個々の敷地ごとの計画を想定した法の規制をそのまま適用することは、合理的とはいえない。一体的な計画の中で法の趣旨を満足し得るならば、法の一律的な適用を緩和しようというのが、法第86条による一団地の総合的設計である。
東京都においては「建築基準法第86条第1項、同条第2項及び第86条の2第1項の規定に基づく認定基準」を定めており、本計画建築物は敷地面積に対する接道に関する条件にも適合している。
申請人らは低層棟の火災時における避難経路について、実質的に機能しない旨の主張をしているが、機械式駐車場は密閉式の消火設備が設置されているうえ、低層棟の階段からエントランスホールを経て道路への避難も可能なため、避難上支障はない。
また、道路に面しない住戸については、東京都建築安全条例第19条に基づく窓先空地を設け、屋外通路にて道路へ連絡しているため駐車場を介さずに避難することが可能である。
なお、法第86条第1項は特定行政庁が建築物の位置及び構造が安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるものに対して、法第4 3条、法第52条、法第53条、法第56条等の一部の規定について、一の敷地とみなすものであり、一つの建築物と認定するものではない。また、都市計画の手続きも必要としない。
よって、請求人らの主張は失当である。