事件の概要
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東京都建築審査会の記録
審査請求にかかる処分
- 財団法人住宅金融普及協会が平成21年8月26日付第H21普及協会00042号で訴外建築主株式会社明建及び積水ハウス株式会社に対してなした建築確認処分
- 東京都知事石原慎太郎が平成21年3月19日付20都市建指建第1635号で訴外建築主株式会社明建及び積水ハウス株式会社に対してなした建築基準法第55条第二項の規定による認定
- 東京都知事石原慎太郎が平成21年3月19日付20都市建指建第1636号で訴外建築主株式会社明建及び積水ハウス株式会社に対してなした建築基準法第86条第一項の規定による認定
審査請求の趣旨
上記の処分を取り消す との裁決を求める
審査請求の理由
@建築基準法第18条の2違反
本件処分の処分者である財団法人住宅金融普及協会は住宅金融等に関する総合的な調査研究及び情報提供並びに住宅の審査等を実施するとともに、独立行政法人住宅金融支援機構の業務に協力し、住生活の向上及び住宅問題の解決に寄与することを目的にしており、組織として住宅建設事業者よりのスタンスをもつこと、及び、非常勤理事であるE.B.氏は本件建築物の工事施行者である大成建設の元社員であるので、公正な判断には疑問があるといえます。
A建築基準法第22条及び63条違反
本件建築物は低層棟の屋上を緑化する計画を文京区に届け出ていますが、本件建築物のある敷地は防火地域及び準防火地域に指定されており、屋根に樹木などの可燃物を意図的に配置することは適法と言えない疑いがあります。建築基準法63条は「防火地域又は準防火地域内の建築物の屋根の構造は、市街地における火災を想定した火の粉による建築物の火災の発生を防止するために屋根に必要とされる性能に関して建築物の構造及び用途の区分に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。」とあり、これはとりもなおさず、近隣への延焼防止のための規定であるので、低層棟の屋上に樹木や化学肥料など可燃物を恒常的に配置するのは危険ではないのか、と考えられます。
B建築基準法第29条違反
建築物における衛生的環境の確保に関する法律によれば、本件建築物は同法にいう特定建築物であり、地下1階と地下2階部分の住居は同法の指定を受けます。同法で特定建築物は建築物環境衛生管理基準をおき、ねずみや昆虫の発生を防止し、常勤の衛生士を置かなければならないことを義務付けていますが、本件建築物の計画が衛生環境の確保にことさら配慮している客観的事実がありません。
C建築基準法第34条違反
本件建築物は高さ31.41mであり、同条項の規定では31mを超える建築物は非常用エレベータの設置が義務付けられていますが、高層棟にある4基のエレベータはいずれも住居用の小型エレベータであり、非常用のものは計画されていません。高層棟は構造的に横に通じる通路がなく、実質的に4軒の高層建築物が横に密着して建つ形態であるので、消防隊が外部から入りにくい構造になっております。これはとりもなおさず、初期消火の失敗を誘因するものであり、地域全体の安全保障を脅かす建築物であるということができます。
D建築基準法第48条違反
本件建築物の内、機械式駐車場は第1種低層住居専用地域内にありますので、第1種低層住居専用地域に建設できる付属建築物である本件駐車棟は低層棟の住宅に付属する施設としての機械式駐車場となります。しかし、設計図を見るかぎり構造上、低層棟の附属建築物であるとはいえず、むしろ高層棟に構造的に接続しています。仮に高層棟側の付属建設物として第1種低層住居専用地域指定を逃れるものとしても第1種中高層住居専用地域内に設置できる駐車場の延べ床面積は1000平米となっており、本計画建築物の延べ床面積はその指定も超えるものとなっており、さらにまた都市計画決定されていないため、この機械式駐車場の設置は違法であるといえます。
E建築基準法第55条適用に関する疑義
本件建築物は同法第56条第7項の規定を受け、第1種低層住居専用地域においても隣地の高さ制限にかかわらず地盤面から12メートルの高さの建築物まで建ててよいと認定されていますが、この地域ではこれまでこの高さ制限の緩和が認められた前例はありません。本建築物が法律上の必要条件を満たしていないのにもかかわらず、なぜ土地の境界線から6メートルの距離を置かないと本来受けられない「隣地の高さ制限」を適用せずに12メートルの高さ制限緩和を受けたのか、処分庁の判断は誤りであり、違法です。
F建築基準法第86条違反
本件建築物は一団地の認定を前提として計画されていますが、本件建築物の敷地は7,700u以上と広大な敷地面積を有するにもかかわらず、北側部分しか広幅員道路(目白通り)に接道しておらず、東西側は接道なし、南側は幅員4メートル弱(最も狭い箇所で3.25メートル)の消防車など大型車両が進入不可能な道路(目白坂)に接道しているだけとなっています。それにもかかわらず本件建築物は北側に31m超の高層棟を東西向きに配置しており、また結果として南側に配置された、一本通路でのみ高層棟と接続されている低層棟の火災時、災害時の消防、避難経路を大きく妨げる構造となっております。また、高層棟と低層棟の間には火災時に密閉消火設備の設置された機械式駐車場があるため、実質的に避難経路として認定することには困難があります。このような建築物を都市計画決定なくして一つの建物と認定することは違法です。
G建築基準法第91条違反
本件建築物の敷地は第一種低層住居専用地域(5,977.97u)と第二種住居地域(1,546.96u)とにまたがっており、過半以上(79.44%)の敷地面積が第一種低層住居専用地域に位置しております。したがって建築基準法91条の定めにより、過半の属する地域つまり第一種低層住居専用地域に関する法律の規定が予定建築物全体に適用されるべきことは明白です。しかし、本件建築物は第一種低層住居専用地域の建築物の高さ制限および容積率を超える建築物を含んでおり、本件処分は建築基準法第91条に反する違法なものと考えます。
H建築基準法施行令第126条の6違反
同法令は「建築物の高さ三十一メートル以下の部分にある三階以上の階(には、非常用の進入口を設けなければならない)としていますが、本建築物には消防隊が消火活動のために円滑に建物内に進入し、また行き来できる非常用通路が設置されていません。高層棟と低層棟は階段のないエレベータ1本のみで連絡されており、停電時には消火活動はもちろん、避難もできない構造になっており、違法です。
I東京都建築安全条例第11条違反
同条例第11条では「その部分に通ずる直通階段のうち一以上を特別避難階段とし、その他のものを屋外に設ける避難階段としなければならない」としているが、本件建築物の高層棟に設置されている直通階段はブロックごとに一つだけ設置され、同階の部屋でも他のブロックからアクセスできない構造になっているため、構造的に同条項に違反しているものと考えられます。
J東京都建築安全条例第19条違反
同条例第19条では窓先空地とよばれる、共同住宅における火災時の避難を容易にするために、共同住宅の敷地のうち、1階の住戸の窓に直面する敷地部分において、本建築物の場合は幅員4メートルの空地を設け、その空地を避難経路として利用できるように設置することが義務付けられていますが、本建築物の大部分の当該居室において、この窓先空地が設置されていません。同条項はまたこの窓先空地が有効な屋外避難経路に接続されていることを求めていますが、低層棟にはこの屋外避難経路そのものが設定されておらず、極めて危険な状態にあるものと思われます。
K東京都建築安全条例第28条違反
同条例第28条第二項は「自動車を昇降させる設備を設ける自動車車庫等における当該設備の出入口は、奥行き及び幅員がそれぞれ六メートル以上の空地又はこれに代わる車路に面して設けなければならない」としているが、本建築物の自動車出入ロは入ロと出口とが壁面で区切られている構造であるため、六メートルの幅員を確保できておらず、違法です。
L東京都福祉のまちづくり条例施行規則第5条違反
同条例第5条は共同住宅の福祉設備の整備基準として「共同住宅等においては、道等から各住戸までの経路のうち一以上及び各住戸から車いす使用者用駐車施設までの経路のうち一以上を、多数の者が円滑に利用できる経路にしなければならない。」としていますが、本建築物では車いす用駐車場から高層棟ラウンジを経て低層棟に向かう場合において有用な移動施設を整備する計画がなく、エレベータ1基のみでの連絡では多数の者が円滑に利用できる要件を満たしているとは思われません。
M容積率についての疑義
本建築物は、地下階を設けることで容積率を緩和していますが、正式な設計図面を開示し、延床面積、建築面積算定表を提出して法に反してないことを証明してください。
N資料提出の要請
確認申請書類として提出された配置図,各階平面図(各住戸の窓先空地及び避難経路が明示されているもの),立面図,断面図,天空率審査用図書一式に合わせて,既に提出を求めている建築面積・延床面積算定表,平均地盤面算定図,現況地盤面測量図,真北方位角調査書,日影図,天空率審査用図書を提出し,確認処分が適法に行われたことを証明する資料の提出を求めます。