審査請求申立の趣旨
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Updated on 2009/10/3
文京区の弁明
(3) 請求人らの審査請求人適格について
行政処分に対し不服申立てをすることができる者は、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、または、必然的に侵害されるおそれのある者に限られている。しかし、法に規定されている開発行為の許可制度は、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るために一般的な禁止を具体的に解除するものであって、私人の権利ないし具体的利益を直接保護することを目的としたものではない。請求人らのうち、請求人B及び請求人Cの2名は、本件開発区域の北側に居住し、それぞれの居住位雇から本件開発区域までの水平距離は、Bが約65m、Cが約18mである。両名は、本件処分の対象となった開発区域外の住民であり、本件処分により権利若しくは利益を必然的に侵害されるとはいえず、また、主要地方道8号千代田練馬田無線(以下「目白通り」という)を介して反対側に居住するため、本件開発区域内の擁壁(高さ5m)の崩壊や溢水のおそれ等により、幅員18mの目白通りをこえて、両名の居住する住居まで、土砂や水が浸入することは到底考えられず、生命・身体に直接被害が生じるおそれがあると認められる者ではない。
また、請求人Dは、地下鉄丸の内線茗荷谷駅周辺に居住する住民であり、本件処分の対象となった開発区域外の住民である。本件処分により権利若しくは利益を必然的に侵害されるとは言えず、また、崖崩れや出水のおそれ等により、生命・身体に直接被害が生じるおそれがあると認められる者ではない。
したがって、請求人らのうち上記3名については、本件処分の取消しを求める法律上の利益及び審査請求を申し立てる適格を有しないのであって、上記3名に関する本件審査請求は不適法であるというべきである。
(4) 処分の取り消しを求める訴えの不適法について
法第50条の規定に基づき、開発審査会に対して審査請求は、処分若しくはこれに係る不作為をその対象とするものである。そして、処分とは、行政機関が具体的事実に関して、法律に基づき権利を設定し、義務を命じる等、国民の権利・利益について直接法律上の効果を発生させる行為をいうものと解されている。法第37条制限解除は、法第50条の規定に含まれておらず、審査請求の対象になしえないものである。したがって、法第37粂制限解除それ自体は、請求人らに対して、権利を設定し、義務等を命じる等の性質を有するものではないから、請求人らに対して、直接法律上の効果を発生させるものとすることはできないので、法第37条制限解除の取り消しを求める訴えは不適法である。(5) 本案の弁明について:棄却を認める理由
本件審査請求の法律上の争点は、本件処分は、主に法第33条の規定に適合するか否かであるが、次の理由によって適法かつ妥当である。請求人らは、法第33条第1項第1号は一敷地一建築物を前操としており、法第11条第1項第8号の一団地の住宅施設の都市計画を決定していない以上、建築基準法(以下「基準法」という )第86条、第91条に違反している。処分庁の開発許可処分は、法第33条第1項第1号違反である旨主張する。※(審査請求人の訴えはこちらです。)
法第33条第1項第1号の規定は、申請に係る開発区域内の土地について、用途地域が定められている場合には、予定建築物等の用途が当該用途地域等に適合していることを求めているにとどまるのであり、同項及びその関連規定の中に、それ以上、本号の規定が請求人らが主張するような一敷地一建築物を前提とすると解すべき根拠を見出すことはできない。本件敷地の用途地域は、第一種低層住居専用地域と第二種住居地域である。本件予定建築物の用途は共同住宅であり、いずれの用途地域の規制にも適合しており、開発許可処分に違法性はない。
したがって、その余の一団地の住宅施設、基準法第86条、及び第91条は、本件処分と直接関係がない。請求人らの主張する法第11条に定める「一団地の住宅施設」は、 一団地における50戸以上の集合住宅及びこれらに付帯する通路等を都市計画で定めるものであり、都市施設として必ず定めなければならないものではなく、必要なものを都市計画として定めるものである。本件開発許可に係る区域は、周辺区域も含めてすでに住宅を中心とした土地利用がなされ、目白通りなど既存の道路基盤も整った地域であるため、一団地の住宅施設を都市計画決定する必要はない。
なお、請求人らは、本件開発区域が接する特別区道文第3号線(以下「日白坂」という )について、最も狭い箇所で3.25mであり、消防車など大型車両が進入不可能な道路と指摘するが、文京区道路台帳現況平面空目こよれば、本件区域のごく一部に幅員が3.95mの2項道路が存在するものの、本件開発区域から東側の目白通りに至る区間及び西側の椿山荘に至る区間については、いずれの区間も幅員が4m以上である。東京消防庁の資料によれば、はしご車や救急車の全幅は、それぞれ2.5m、 1.9mであり、目白坂への進入は十分可能である。また、本件開発区域内に日白坂に沿って、合計4mの歩道状空地を設置する設計であり、緊急車両等が転回することも可能である。申請者は、小石川消防署と法32条の協議を行い、申請者から協議書及び相談記線簿が提出されており、消防活動上支障ないものと認識している。